木賃アパートと団地

(「モダン都市」の続き)

モダン都市の系譜―地図から読み解く社会と空間」(第4部「高度成長と現代の都市空間」)より。

木造賃貸アパート。

 1960年代の高度経済成長期に増大する大都市圏の人口の受け皿となったのは、木造賃貸アパートであった。

木造賃貸アパートは、「鉄道沿線に線状」「都心周辺部に同心円状」に分布。大阪圏では、「都心10km圏内ではほぼ全域的に同心円状に分布し、10kmを超えると鉄道沿線に線状に分布する構造となっている。」

アパート団地。

 スプロール地帯の代表格であるこうした木造賃貸アパート集中地区の登場と好対照であったのは、緻密なプランの下に設計されて登場した中層建築を主流とするアパート団地であった。そのなかでも1955年に設立された日本住宅公団の役割は画期的であった。当時の若いサラリーマン夫婦の夢や憧れとなったアパート団地のイメージは、公団の住宅地から生まれたのである。

半世紀を経た現代では、アパート団地の何割かは、老朽化や住民の高齢化等の社会問題を抱えている。*1

大都市の光と影。

「(都市とは)人間が思い通りに自分の住む世界を改造しようとした試みの中でも、もっとも長続きをしまた全体としてもっとも成功した試みの成果なのである。けれど、都市が人間の創造した世界だとするならば、それはまた人間が今後生活し続けていくように運命づけられた世界でもある。こうして間接的に、自分の作業の本質的性格にはっきりと気づかぬままに、人間は、都市をつくる作業を通じて自らを改造してきた。」(都市社会学者・ロバート・パーク

デヴィッド・ハーヴェイの問い。

Can we build an urban utopia?
 わたしたちは都市ユートピアを建設することができるだろうか。

(以上)

ちなみに、この本は、都市の「光と影」についてを、交互に記述する(各章の末尾に「特論」というかたちで都市の「影」の部分の記述が挿入されている)という特異な編集となっている。「影」とは、同和地区、部落、在日朝鮮人、沖縄出身者、あいりん地域、等々の生活世界についてである。それらについて、僕は全く知らなかったので、とても勉強になりました、というか、あまりにも知らない自分に驚くくらいに衝撃的でした。あと、第8章の戦時中の「建物疎開」(防空空地帯)と、その戦後の経緯(意図せざる近代化)についても興味深い。

まっ、そんなわけで、カール・マンハイムの「イデオロギーとユートピア」を購入。

*1:旧ブログ(babyism)の「郊外の景色-3」(ニュータウン再生計画、国交省)、「World of Tomorrow」(老朽化したマンションの建て替え、東京都)、「World of Tomorrow の補足」(ライネフェルデのニュータウン再生)、あと、もうひとつのブログの「柏から考える」の記事参照